EVENT REPORT

初夏の北鎌倉に心地よい空間が生まれる。
音楽と禅の祭典「きたかまフェス」開催

四季それぞれに楽しめる鎌倉ですが、梅雨入りする直前のこの時期を好む地元の人も多いのです。木々の緑は目にも鮮やかで、風は清々しい!とても気持ちがいい。それに蚊に刺される心配もほとんどありません。野外で過ごす絶好のシーズンです。

そんな新緑の眩しいゴールデンウィーク期間の平成29年5月6日に音楽と禅のイベント「きたかまフェス」は開催されました。北鎌倉の名だたる名刹が会場。出演アーティスト18組、天気にも恵まれ来場者は400人を超えました。

このフェスの主宰者は地元で愛されるミュージシャンの『小川コータ&とまそん』(通称コタとま)です。イベントを始めようと思ったきっかけは?と伺うと「初めてお寺でライブした時の“不思議な体験”が忘れられなかったから」とお二人は言います。「いつもの曲なのに、自身が感動しているのに気がつきました。他の出演者のライブを観ても、いつもより身体に沁みてくるんです。なぜだろう?と感じたのが始まりです」

お寺の神聖な空気に身を置くと、五感が研ぎ澄まされて、木々のざわめき、鳥のさえずりが、次第にはっきり耳に入ってくる……。雑念が取り払われて、穏やかな気持ちになってきます。心身ともにすっきりと目覚めるような感覚は、誰にでも一度は経験があるのではないでしょうか?

瑞光殿に設けられた受付ブースで目に入ってくるのが、オズマガジンのコーナーです。春にお馴染みの鎌倉特集は今年で10年目を迎えるそうです。そして、コタとまがオズマガジンの鎌倉特集にオリジナル楽曲を提供し始めて3回目。今回は「鎌倉の味」をテーマにした曲「ふらっと」です。ふらりと鎌倉に帰りたくなるような曲です。ぜひ聴いてみてください。

編集長の古川さんがスタッフの方と手づくりした『コタとま&オズマガジン、3年間のコラボ紙面をまとめた~きたかまフェス限定ZINE』。コタとまのニューアルバムとオズマガジンを購入した方へのプレゼントです。カラコピして二つ折りにして、ホチキスで留める…古川さんが作業する姿が目に浮かぶようなスペシャルなZINEです。

瑞光殿の側の青空ステージでは、芝生の上に座ってライブを楽しめます。アートワークショップでは子供たちがダンボールに絵の具を使って思い思いの作品を創作していました。室内でも陶芸、似顔絵、ボタニカルなヘアアレンジ、小物づくりのワークショップが多数開催され、大人も子供も夢中に取り組んでいました。また、飲食ブースも充実。地元の鎌倉ビール、近頃話題のドーナツ、湘南の美味しいと評判のお店が軒を連ねていました。プチ食フェス状態! あれもこれもついつい手が出そうです。

その奥のライブ会場のデコレーションにはこだわりを感じました。カフェのような寛ぎの空間を創り出していました。ミュージシャンとの一体感は、小さな会場ならでは。音をダイレクトに感じることができます!

円覚寺の佛日庵もきたかまフェスでは、ライブ会場になりました。お寺ですからお作法があります。いくら新緑が眩しくてもサングラスはダメです。帽子は取って上がらせていただきます。ビーサンで来ている人はいませんか? 裸足もNGです。靴下を履きましょう。お寺巡りをする時にも役立つ心得を学ぶことができました。

「浄智寺 書院」もライブ会場の一つです。来る人達のために座布団が敷きつめられていました。古い日本家屋ですから、色々気をつけなければなりません。光を優しく通す縁側の戸のガラスは、大量生産のそれとは明らかに性質が違います。うっかりもたれて割ったりしては大変です。建物自体が貴重です。

靴を脱いで聴く音楽に心も体もリラックスしていくのを感じます。友人の家でミュージシャンがライブしてくれているような夢のような体験です。隣の人とくっつきながら、譲り合いながら、それぞれが居心地良くしていくような一体感も嬉しい。みんなで声を合わせてミュージシャンと歌うなんて、なんて楽しい‼ 

ライブ会場を渡り歩く合間には、たい焼き、お米ソムリエが握るおにぎり、冷たい焼き芋、ピザ…。湘南で大人気のキッチンカーが集結。ちょっと足を延ばして「たからの庭」では朝比奈恵温ご住職特製の「恵温カレー」等、他の会場では行列に並ばなければ食べることができないと言われている美味しいものが、ここでは鳥のさえずりの下でゆっくりと味わうことができました。

きたかまフェスで、子供達が楽しめたメニューに「スタンプラリー」がありました。配布されたMAPをたよりにチェックポイントで、スタッフからリスのスタンプを押してもらいます。なっかなか見つかられないポイントもあったりして(汗)スタンプを全て集めたら、可愛いリスの缶バッチがもらえました。コンプリートした達成感が味わえましたよ。聞くとこの缶バッチは藤沢養護学校鎌倉分教室の生徒さんたちが作ったのだそうです。

浄智寺の「曇華殿」前につくられた特設ステージできたかまフェスのラストを迎えます。御本尊の「三世仏(阿弥陀如来、釈迦如来、弥勒如来)がきたかまフェスのファイナルを見守ってくださっているような畏れ多い、ありがたい気持ちになります。

ラストを飾ったのは、小川コータ&とまそんです。老いも若きもお寺に集い歌って、踊ってみんなが笑顔で楽しそうでした。夕方になり少し日が暮れると、昼間とは違う雰囲気になりました。周りは暗いのですが、ステージは明るく照らされ、その奥に三世仏のお姿が機材の間から見えるという滅多にない貴重な光景が広がっていました。御本尊様もまさか、建立400年後にこんなライブが行われるなんて思われなかったでしょう。ライブ終了後のみんなの穏やか顔は仏様に見守られていたからなのかもしれません。

コタとまに「お寺は文化を発信する場所、たくさんの人が集まるコミュニティ」と浄智寺の朝比奈恵温ご住職がおっしゃったそうです。きたかまフェスは、まさしくそうではないでしょうか? 禅、音楽、芸術、食が凝縮されていて、メニューが盛り沢山なイベントでした。それでもゆったりと過ごせるのは、北鎌倉とお寺が会場だからなのだと思います。

新しい北鎌倉、鎌倉の楽しみ方の一つとして、もっとたくさんの人に知って欲しい。このイベントが北鎌倉のお寺のお祭りのように毎年恒例の行事になってもっとたくさんの人に参加して欲しい。日本人は信心深いと思いますから、きっと誰もが、それぞれに楽しめると思うのです。私にもきたかまフェスへの愛情が生まれました。

文:萩原有美子 構成・編集:千田裕子